就業規則(記載事項)Q&A

就業規則(記載事項)について、Q&A形式で法律と実務を解説します。

●就業規則には何を記載しなければならないのですか?

→「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項」「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」「退職に関する事項(解雇の事由を含む。) 」は必須。その他にも会社ルールがあれば記載する必要があります。

就業規則に記載する必要のある事項は労働基準法で定められています。具体的には以下の絶対的必要記載事項と、相対的必要記載事項です。絶対的必要記載事項とは「必ず記載しなければならない事項」、相対的必要記載事項とは「定めをする場合には記載しなければならない事項」を意味しています。

【絶対的必要記載事項】
①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇の事由を含む。)  

【相対的必要記載事項】
④退職手当に関する事項
⑤臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
⑥食費、作業用品などの負担に関する事項
⑦安全衛生に関する事項
⑧職業訓練に関する事項
⑨災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑩表彰、制裁に関する事項
⑪その他全労働者に適用される事項

●シフト勤務のため日によって始業・終業時刻が異なります。労働時間は1日あたりの労働時間数だけ記載しておけば良いでしょうか?

→いいえ、始業・終業の時刻は必ず記載してください。

「始業及び終業の時刻」は絶対的必要記載事項ですので、1日あたりの労働時間数を記載するだけでは足りません。この場合、基本となる始業・就業時刻を就業規則に記載しておき、併せて日ごとの具体的な始業・終業時刻は個別の労働契約等(シフト表を含む)で定める旨を記載してください。

なお、早番と遅番の2パターンに分かれる場合など、勤務パターンごとに始業・終業時刻が定まる場合には、パターンごとに始業・終業時刻を記載する必要があります。また、シフト表による始業・終業時刻がバラバラで基本となる始業・終業時刻を定めることが難しい場合には、どれか1つのパターンの始業・終業時刻を記載して具体的には労働契約等(シフト表を含む)で定める旨を記載しておいてください。

●管理監督者の場合は始業・就業時刻を記載しなくても良いですか?

→いいえ、管理監督者であっても始業・終業の時刻は必ず記載してください。

労働基準法に41条によると、いわゆる管理監督者には労働時間、休憩、休日に関する規定は適用しないことになっていますが、就業規則の記載事項の適用を除外して良いとは書かれていません。したがって、管理監督者の場合であっても始業・終業時刻を記載する必要があります。この場合、原則の始業・終業時刻を記載したうえで、本人の自主的な管理に任せる旨の記載をすることになります。

●休憩時間については何を記載すれば良いのですか?

→休憩時間の長さや与え方等について具体的に記載してください。

休憩時間の「長さ」とは何時間何分なのか、「与え方」とは事業場の全員が一斉に休憩するのか、交代制で休憩するのか等といったことを意味しています。休憩時間をまとめて1回ではなく分割して与える場合はその旨も記載し、休憩時間の位置(時間帯)もなるべく特定するようにしましょう。

なお、交代制で休憩を与える場合、運送業や旅館、飲食店といった一定の例外業種に該当しないのであれば、「一斉休憩の適用除外の労使協定」という労使協定を締結しておく必要がありますので注意しましょう。

●休日については法定休日を必ず特定しなければならないのですか?

→いいえ、法定休日を必ず特定しないといけないわけではありません。

法定休日を特定することまでは法律は求めていません。

例えば土日休みの場合に日曜日を法定休日と定めることがありますが、これにはメリットとデメリットの両方があります。特定する場合のメリットとしては、給与計算における割増賃金の計算がしやすくなるとともに、割増賃金の金額に対する認識齟齬が起きにくくなることが言えます。一方デメリットとしては、例えば所定休日の土曜日にお休みし、法定休日の日曜日に休日出勤をした場合に割増率が大きくなってしまう(割増賃金の額が高くなる)ことが言えます。

このように、法定休日を特定する・しないのどちらが良いとは一概に言い難い部分がありますので、会社の方針に基づいて判断するようにしてください。

●法律上義務となる休暇・休業しか会社にはありません。それでも休暇として何か記載する必要があるのですか?

→はい、その場合は法律上義務となる休暇・休業を全て記載してください。

休暇については、年次有給休暇や産前産後休暇、育児休業、介護休業など法律で定められている休暇・休業と、それ以外に会社で定めている休暇(慶弔休暇など)・休業(傷病休職など)を全て記載する必要があります。

なお、例えば育児休業を就業規則に規定する際に、「育児介護休業法の定めによる」という記載で法律を包括準用することでも、就業規則への記載義務は満たしたことになります。ただし、別途解説する通り、法律を包括準用する規定を就業規則に定めた場合は、法律に記載のある全ての規定が労働契約の内容となってしまい、努力義務や配慮義務等も含めて履行義務が発生することになってしまいます。そのため、このような場合は別冊の育児介護休業規程を作成し、法律を包括準用する規定は定めないことをお勧めします。

●賃金の決定、計算の方法については何を記載すれば良いですか?

→賃金の決定要素、賃金の構成、計算単位といった事項を具体的に記載してください。

「賃金の決定要素」とは何によって賃金が決まるのか(勤続年数、能力など)、「賃金の構成」とはいわゆる賃金体系(基本給、職種手当、割増賃金など)、「計算単位」とは月給や時給など何を単位に計算するのかを意味しています。割増賃金の割増率や端数処理等についても、計算方法にあたりますので就業規則への記載が必要になります。なお、賃金額そのものの記載が求められているわけではありません。

●退職事由はどこまで記載すれば良いですか?

→労働契約が終了する全ての事由を記載してください。

「退職」という言葉は、一般的には契約期間満了に伴う退職や労働者の意志による任意退職等を意味して使われますが、ここでいう「退職」とは解雇を含めて労働契約が終了する全ての場合を指しています。そのため、定年退職、死亡退職、契約期間満了に伴う退職、労使双方の合意による退職だけでなく、解雇等も含めて労働契約が終了する事由を全て記載するようにしてください。

●退職手当については何を記載すれば良いですか?

→適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、退職手当の支払時期を記載してください。

退職手当とは、いわゆる退職金のことを指しています。「労働者の範囲」は、雇用形態、職種、勤続年数といった対象者の条件が分かるように記載します。「退職手当の決定、計算の方法」は勤続年数、退職事由といった退職手当の金額の決定要素を、「支払の方法」は一時金なのか年金で支払うのかを記載します。「支払時期」は退職手当をいつ支払うかを記載します。ただし、確定給付企業年金制度に基づき年金または一時金が支払われる場合で、保険会社の事務的理由等によりあらかじめ支払時期を設定することが困難な場合には、日付を確定する必要はありませんが、いつまでに支払うかはできるだけ明確にしておく必要があるとされています(昭63.3.14基発第150号)。

●臨時の賃金等については何を記載すれば良いですか?

→支給条件、支給額の計算方法、支払時期等を明確に記載してください。

ここでいう臨時の賃金とは、「臨時に支払われる賃金」、「賞与」、「その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金」を意味しています。例えば、就業規則の定めによって支給される私傷病手当、労働者の勤務成績に基づいて支払われるいわゆる賞与(ただし予め支給額が確定されていないもの)、1か月を超える期間の出勤成績によって支払われる精勤手当といったものが該当します。 このような臨時の賃金等の支給条件(支給する・しないの条件)、支給額の計算方法(支給額が何によって決まるのか)、支払時期(いつ支払うのか)等について明確に記載するようにしてください。

●制裁の定めについては何を記載すれば良いですか?

→制裁(いわゆる懲戒と同義)の種類と程度を記載してください。

制裁とは、使用者が企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために行われるものです。制裁を設ける場合には、その種類と程度を就業規則に明確に定める必要があります。具体的には、譴責、減給、出勤停止、懲戒処分といった制裁の種類のほか、制裁の種類ごとに程度の処分内容なのか、どのような事由に該当した場合に制裁を行うのかといった事項を具体的に記載するようにしてください。

●「この規則に定めのない事項は・・・(中略)・・・法令に定めるところによる」という文言は入れるべきですよね?

→入れるかどうかは、慎重に判断してください。

この質問の文言のように、法律を包括準用する規定を就業規則に定めることがあります。このような法律を包括準用する定めをした場合、法律に記載されている全ての規定が労働契約の内容となってしまい、義務規定だけでなく努力義務や配慮義務、訓示規定も含めて労使双方に履行義務が発生してしまうことになります。そしてこれは、思わぬトラブルを招いてしまう恐れがあります。このような法律を包括準用する規定を定めるかどうかは、慎重に判断するようにしてください。

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